和而不流(和して流れず)

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経済の回復には『安全』と『安心』の確保が前提

検査体制の確立とワクチン・特効薬の開発を急ぐべき

新型コロナウイルス感染症の新規感染者数を表すグラフを見ると、3月下旬から急上昇し、4月中旬をピークに下降し、5月中旬からは小康状態を保っています。政府が感染の多い7都府県に対し新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言を発出した4月7日の新規染者数の368人が4月11日の720人をピークに下降し、5月の連休明けの感染者数は2桁になったことは、紛れもなく宣言の効果ですが、「経済を廻す」として、自粛の全面解除を行った6月19日の以降の新規感染者数は急増しています。PCR検査の受検数が大幅に増加したことで陽性率は4月の30%から5~6%となり、重症化や死亡に至るケースはそう多くないことから「大事無い」との判断も聞こえますが、緊急事態宣言による行動抑制が感染防止に効果を上げたことをしっかりと検証・評価し、今後、往来の解禁によって生じる感染者数の変動や感染地域の拡大をしっかりと注視する必要があると考えます。
自民党の観光立国調査会事務局次長の武井俊輔衆院議員が観光業界の窮状を示して「Go Toキャンペーン」の必要性を訴え、国土交通省は感染者数の動向を踏まえて早期の実施を検討していると聞きますが、関東や近畿一円の新規感染者数は増加傾向を示しており、感染を全国に拡散させる可能性が否定できません。新型コロナ特措法では感染防止や疫学調査などの実施は都道府県知事の権限とされ、キャンペーンの実施を「時期尚早」とする知事意見が多い中での「見切り発車」は疑問です。
東京オリンピック・パラリンピックが1年延期になったとは言え、新型コロナウイルス感染が収束する確たる見込みはなく、アメリカやブラジルでは感染者数が7桁になっている現状からは、適切な対応がなければ感染のリスクは増大し続けるように感じます。経済を廻すことや通常の社会を取り戻す方策は容易くできることではなく、政府は、住民が一定の日常を過ごすことが可能となるようにワクチンの開発や感染の有無を容易に確認できる検査体制の構築を急ぐべきだと思います。
新型コロナウイルス感染の懸念から生じる消費減退や観光需要低下の回復には、まず『安全』と『安心』の確保が必要です。検査体制の確立や適切な隔離施設の整備によって感染者と非感染者の接触が分断できれば、コロナ後の新たなウイルス出現にも有効な手立てになります。10年前、新型インフルエンザの感染の折に検査体制の整備が課題とされながら、終息後に放置され、感染症法規の改正で国内に整備されていた隔離施設が廃止されたのは大いなる反省点であり、この際、政府は早急に『国策』として検査体制の確立とワクチン・特効薬の開発に思い切った財政措置を講ずるべきであり、莫大な財源を投じて困窮していない人にまで一律に現金を配布する愚策や目先の対応策に終始するような施策の繰り返しだけは避けなければなりません。

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