和而不流(和して流れず)

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保育職は使い捨てではない

保育や学校の現場にこそワクチンの優先接種をすべきだ

出雲市の認可保育園と認定こども園の法人理事長と施設長で構成する出雲市認可保育園(所)理事長会は、5月17日の令和3年度総会の開催を前に、総会の席上で行われるこども未来部長の行政説明での言及を期待して、出雲市に対して新型コロナウイルス感染症に関わる要望事項を伝えた。
要望の要旨は、出雲市保育幼稚園課から市内の保育施設に発出された新型コロナウイルス感染症対応マニュアルには、保育園(子ども園)の園児および職員、保護者ならびに同居の家族等が感染または濃厚接触者、体調不良となった場合の対応や市への報告、休園、登園停止などについての指示事項が記載されているが、保育現場の安全を図り、危機管理を適切に講ずるためには正確な情報に基づいた対応が不可欠であり、保育園から市への通報同様に関係行政機関からの迅速かつ適切な情報提供を求めるとする事項とコロナ禍における『エッセンシャルワーカー』として医療や介護の現場で働く人々にワクチンの優先接種や危険手当の支給が行われているが、子どもは感染リスクが低いとして保育現場の職員は除外され、変異株の子どもへの感染が報告されクラスターの発生事例が生じても変更はされていない。保育の分野は、業務上、職員と子どもの「密接」は避けられず、保育士は自身の感染リスクと立ち向かいながら、子どもたちを支えており、保育現場に対する配慮を求める事項の2点である。
行政説明において出雲市からの回答はなく、質疑応答の場で改めて理事長会の要望事項に対する見解を求めたところ、「島根県から出雲市への感染情報の提供はマスコミ報道を超えるものはなく、学校での感染事例の把握も当事者から学校への申し出によるものと承知しており、市から各施設への情報提供は難しい」との見解が示された。コロナ禍という国難と言うべき事態で、県と市の情報交換が行われていないなど、とても「はいそうですか」と言える問題ではない。島根県は徹底した疫学調査に基づいたピンポイントのPCR検査によって感染経路の特定を図り、早期に感染者を隔離することで重症化を防ぎ、コロナによる死者を出していないことは県と市町村との密接な連携が執られている証左で、出席者は一様に戸惑ったが、驚いたのはその後で、「保育現場の安全確保の観点からも正しい情報提供とワクチンの優先接種をお願いできないか」とする再度の意見に対し、「感染防止はマニュアルに沿って個々の園でしっかりと対応してください。ワクチン接種は国、県が決めることで、市としてどうこうできません。」と応じ、さらに「それでは、せめて出雲市として国、県に要望いただけませんか」との意見には「ここで答えられる領域を超えており、難しい」とされた。
保育職は、高い使命感をもって、毎日、子どもたちに全身で触れ合い、社会を支えているが、保育行政を司る責任者が『自己責任で、命がけで保育にあたれ』とばかりの姿勢で現場を見下す姿勢には強い怒りを禁じ得ない。保育園のみならず、幼稚園や学校での感染は直ちに施設の閉鎖となり、社会的に極めて大きな影響を及ぼすことを考えれば、そうした場所で働く者にこそワクチンの優先接種をすることがあたり前だと考える。

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