和而不流(和して流れず)

Columns

過去最大の貿易赤字

国内消費を活発にするためには中間層や一定の資産保有者の購買意欲を喚起する対策が不可欠

2013年の貿易収支は11兆4745億円の赤字となり、1979年の統計開始以来、過去最大の貿易赤字となった。日本の貿易収支は、2011年に2兆5647億円の赤字を計上し31年ぶりに赤字に転落した後、2012年に6兆9411億円に拡大、13年は10兆円台の大台を突破した。大幅な貿易赤字について、財務省では「輸出は3年ぶりに増加したが、外貨建て比率が輸出より輸入の方が高く、原油・LNG価格の上昇で赤字幅が拡大した」と説明している。
アベノミクスによる経済回復が言われ、円安を背景に、輸出は前年比9.5%増の69兆7877億円と、確かに3年ぶりに増加したものの、数量ベースでは前年比1…

安倍首相の靖国参拝が教える国際情勢の変化

アメリカの外交戦略を見極める必要性

安倍首相が年末の12月26日に靖国神社に参拝したことに対し、中国、韓国のみならず米国政府が“disappointed”との声明を発表したことは、米国が日本よりも中国の意向を重視する姿勢を示すもので看過できないものである。“disappointed”(失望)という単語は「君にはがっかりしたよ」の意で、“regret”(遺憾とする)とは異なる。昨日の報道で、政府筋は「米国大使館のコメント」と鷹揚に構えているようだが、財政難にあえぐオバマ大統領が、アジアでの軸足を日本から巨大市場である中国に移行させたことは間違いない。

年頭所感

三省と而学

平成26年の年頭にあたり「三省」を思い浮かべた。論語の学而にある三省は『曾子曰、「吾日三省吾身。為人謀而不忠乎。与朋友交而不信乎。伝不習乎。」』とあり、「私は一日に何度も自分のことを反省する。人のために仕事するときに、真心を尽くしたか。朋輩と交際するときに、自分の言葉に責任を持ったか。知ったかぶりで教えなかったか。」との意だが、ともすれば、私たちは人の歓心を得るための言葉を発し、結果として信頼を失う結果となることは少なくない。佐藤三斎は「壮にして学べば 則ち老いて衰えず」と大人になってからも学ぶことの大切さを説いている。とりわけ、為政者や政に参画する者は、物事の本質をきちんととらえ、的確…

インド訪問を終えて

交流拡大には拠点となる地域の選定が急務

インドでは毎日のようにどこかで(宗教ごとに)地方色豊かな行事が催されるそうだ。太陽暦で行われる1月26日の共和国記念日、8月15日の独立記念日、10月2日のガンジー聖誕祭など国家的な祝祭日は毎年同じ日だが、ヒンズー暦やイスラム暦に従って開催される宗教行事は毎年異なる日となる(と言っても、それは太陽暦でカウントする私たちの見方でしか無いのだが)。例えば、月は死と再生の象徴、太陽は不変、不滅の象徴とするヒンズー教は太陰太陽暦によって未来の吉凶を占い、祭事によって季節の到来を告げる。とりわけ、9月末から10月初めには国中が10日間の正月休みとなる『ダシャラー』、11月の初めは5日間の休みとなる…

日頃の備えは「強い信念と 正しい情報把握、対応力の訓練 」

気仙沼市立一景島保育所の大震災体験から学ぶ

東日本大震災の大津波で流失・全壊した気仙沼市立一景島保育所の所長を務めていた林小春さんが、震災当時の様子を講演された。大震災から2年半。復興仮設住宅に暮らす人たちの90%近くが困難な状況にあり、林さんご自身も、今もってご主人の消息は不明とのことである。

一景島保育所は水産加工工場のある気仙沼市潮見町に立地し、震災当時は71人が在所し、保育所は月1回、避難訓練を行い、強い地震の後は近くの気仙沼中央公民館に移動することとし、近くの水産工場に男性従業員の手助けを依頼していたと言う。保育所は津波のリスクが高いとされ、行政防災無線が設置されていたが、3月11日の午後2時46分の緊急地…

教育委員さん「出番です」

大人の都合で見守りや支援を放棄することは「教育の放棄」でしかありません

「児童全員が代表であり、主役であるという意識を子どもらに持たせる」という理由で、県内のほとんどの小学校で学級委員が廃止されています。
ある学校の校長に意見を求めたところ「一部の人間にだけリーダーの自覚や責任感を感じさせることは適切ではない」とありました。
子供たちにクラスのリーダーとなる学級委員を学期毎に投票で選ぶことは民主主義の実践であり、任期を終え、一兵卒となって次に選ばれたリーダーを支える体験は人間的な成長を促進させます。
人は小さな挫折の経験を繰り返してたくましく成長しますが、「選挙に立候補して落選すると子供の挫折や劣等感の因となる」という理屈…

成長戦略にエネルギーや食料の自給率拡大を

TPPの対応よりも急ぐものがあります

「市場に流通する通貨量を増やす」という金融政策は、従来、「金融緩和政策」として金利の調整でマネーストックの増加が図られてきましたが、金利がゼロに近い状態にまで下降したため、「金利」から「資金量」に着目し、中央銀行が国債や証券などを買い入れて市場に潤沢に資金を供給する「量的緩和政策」へと進化しています。
米国では、2008年から実施された量的緩和政策を「QE1」、2010年から実施された量的緩和政策を「QE2」と呼び分け、QE1はサブプライム・ローン問題に端を発した金融危機に対応するため1兆7250億ドルを市場に供給、QE2は米国の景気対策として6000億ドルが供給されました。…

衆参のねじれが解消し国政は安定期に向かう

しかし国政を前進させるためには民主党の再建が不可欠

第23回参院選が7月21日、投開票されました。自民党は改選34議席から倍増の65議席を確保し、政権与党の公明党とあわせて参院の過半数を得ましたが、民主党は改選44議席から17議席と惨敗し、共産党と日本維新の会、みんなの党が改選議席を増加させました。今回の参院選は、昨年12月に発足した第2次安倍政権が迎える初めての審判で、政権与党の勝利は、安倍首相の進める経済政策が支持されたかたちとなりました。
今回、民主党は衆院選に続いて地滑り的な大敗を喫し、特に、比例の得票を6年前の2300万票から713万票に減らし、公明党を下回ったことは8カ月前まで政権与党の座にあったことがウソのようで…

「当たり前の意識を刷り込む」ことの必要性について

『学校基本調査』の数字が意味すること

日本では「15~34歳の非労働力人口のうち、通学、家事を行っていない者」を若年無業者または「ニート」と称し、その数は60万人程度、フリーターは、「学生を除く15~34歳の男性又は未婚の女性で、パート・アルバイトして働く者又はこれを希望する者」のことを言い、200万人に達しているとされています。
文部科学省の『学校基本調査』によると、卒業者の進路で、昨年3月の大卒者55万8千人余のうち、卒業時の進路が未定で、今後も就職や進学の意志がなく、何もしていない者、いわゆる「新卒ニート」が33,555人に上り、卒業生全体のおよそ6%となっていることが報道されました。
新卒ニー…

ストロー現象に立ち向かうためには

松江道路の竣工に思う

「ストロー現象」は、交通網の整備によって交通基盤の「口」に当たる地域に経済活動が集中し、「コップ」にあたる地域の経済活動が衰える現象で、1本の通り道だけで大量の移動が起き、途中の中継地に移動に伴う経済効果がほとんどないのが特徴で、大きくは次の3つのケースが考えられます。
ある交通網の分岐点が発展して分岐先が衰退する。
ある交通網の起点・終点が発展して中継地点が衰退する。
ある交通網の中で規模の大きい都市が発展して小都市が衰退する。

地方都市に商業集積を可能とする背景には、ある程度、交通の不便な環境が起因します。物理的な距離間や情報の非対称…

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